製品へのこだわり/values

日乃本帆布

三香が帆布を選んだ理由

三香堂が帆布を選んだ理由

創設当初は牛革バッグ工房として耐久性や風合い、高級感などを考え牛革にこだわって作っていましたが、昔から革には革のデメリットも存在します。「革は良い素材とは言え、扱い方次第でその機能や魅力が失われてしまう。それで本当に“良い鞄”と言えるのだろうか・・・?」。お客様からの貴重な意見を通して徐々にそう感じるようになっていきました。

牛革バッグの『牛や』として軌道に乗っているにもかかわらず、自分たちの「鞄作りコンセプト」に合う素材を改めて探すことにしましたが、しっくりくるものはなかなか見つかりません。当時のファッション界の様々な素材を探し、それらがピンとこないまま迷走する中でふと「資材用 “綿” 帆布」に出会いました。 もともとは帆船(はんせん)の帆(ほ)に使うための布地として作られ、トラックの幌(ほろ)や野球のベースの表地、テントの天幕(てんまく)布等々・・・。ファッション性や付加価値よりも、その「屋外用」としての耐久性や防水性は「軽く、濡れてもこすっても平気な素材」として革のデメリットを克服していました。
また、何と言っても自然素材ですから、洗ったりこすったりすることでまるでダメージジーンズのように何とも言えない雰囲気が出るのです。この「使えば使うほど味わいの増す帆布」が「長く付き合える鞄づくり」と共感する魅力から、「帆布バッグ作り」に精通していくターニングポイントになっていったのでした。

扱いにくくても、縫いにくくても

扱いにくくても、縫いにくくても

「これなら末永く愛されるバッグができる」。そう思い、早速帆布で鞄を作ることにしましたが、実際この素材で鞄を作るのには大変苦労しました。資材用の帆布はファッション用の生地より丈夫な分とても硬く、縫いづらいのです。それはドイツのシュメッツ社製の五寸釘のように太いミシン針を使っても時々折れてしまうほどです。ミシンも専門的なものに変えなければなりませんが、お客様の要望に応えたい一心で迷いはありませんでした。

この硬い素材は曲げる際にカナヅチで叩いたり、持ち上げて裁断し、ミシンにかけて縫い合わせていく作業で手の指紋も消えてしまうほど頑丈なものなので、とにかく力仕事が多くなります。それ故、縫製の現場に勤めるたくさんの女性スタッフや男性スタッフは大変な作業を日々こなしていることになります。
それでもこの扱いにくく縫いにくい「帆布」をあえて選んだのは、帆布には “綿” 素材ならではの温かさやノスタルジックな風合い、天然素材に由来する日本の文化や “日本らしさ” の価値観に触れる魅力があったからです。

ほぬの? はんぷ?

『帆布』という字を見て、何と読むのか?と質問されることがよくあります。『ほぬの』や『ほふ』とも読めますが、実は『はんぷ』と呼ばれる、造語に近いものです。文字から連想できる通り、古くは帆船の帆に使うための厚手で丈夫な生地として綿(または麻)で織られ、文献で最初に高評を確認されたのは織田信長の帆船とされています。最近ではある程度年配のお客様がご来店の際に「トラックのホロ(幌)だよね?」とか、「登山のザックやテントの生地でしょ?」などとよく言われます。そうです。昭和30年代ぐらいまでの、ナイロンやビニール製品がまだまだ世間に浸透していない時代にパラフィン(蝋/ロウ)で防水加工したこの硬い生地が帆はもとよりトラックの幌やテントに使われ、職人さんの道具袋や牛乳屋さんが配達の時に使う袋など、「とにかく丈夫な生地の代名詞」として「帆布」は受け継がれてきました。

アメリカやその他の海外では「ワックスキャンバス」などと呼ばれ、油やロウで防水加工された生地がかつて西部開拓時代のホロ馬車のホロをはじめ、「トートバッグ」のルーツの “氷を運ぶ袋” に使われたことから「良いトートバッグはバケツみたいに水が汲めて漏れない」なんて「こだわり」の趣向人の講評のきっかけになったりもします。歴史的にも実績と背景を持った本物志向に触れる素材な分、知れば知るほど奥が深く、知り始めて『帆布』にハマる方も多いようです。